N中等部ブログ
【江坂】自分なりのシティズンシップとは?
「軽いけど、重いスマホの話」を通して考える社会との関わり方
江坂キャンパスでは、9月21日(火)から「シティズンシップ」(※1)の授業がはじまりました。
※1 シティズンシップとは、“市民としての権利”のこと。めまぐるしい社会の中で、子どもたちが将来、市民としての資質・能力を発揮できるようにと、近年、欧米諸国を中心に学校教育に導入されています。
角川ドワンゴ学園においてのシティズンシップの定義は、「社会の一員として、自分が共感する人たちの抱える問題に対して主体的に取り組む姿勢」。
全7回の授業を通して、「自分が所属するコミュニティとは何か」「コミュニティに対する自らの関わり方とは」など、自分なりのシティズンシップを模索していきました。
第1回目の授業では、クイズを通して「普段は無料のような感覚で利用しているもの(仕組み)」は「誰かがシティズンシップを発揮して生まれたもの」であることを学びました。
「日本の医療費は何対何で、国と自分が負担していると思うか」というクイズをSlack(角川ドワンゴ学園で使用しているコミュニケーションツール)で出題しました。
正解は、7(国):3(自分)。日本では国民全員の参加で成り立つ国民皆保険制度があるため、医療サービスを少ない費用負担で受けることができますが、生徒たちからは「1:9くらいで国に負担していて欲しい」「0:100であって欲しい」など負担軽減を望む声も上がっていました。
第2回目の授業以降は、「軽いけど重いスマホの話。」というテーマで、私たちが日常で使っているスマートフォンの社会問題について学びながら、自分なりのシティズンシップを考えました。
スマートフォンの原材料である「コバルト」「タンタル」などの鉱物は、アフリカのコンゴ民主共和国で主に採掘されています。
同国は、コバルト(生産量世界第1位)、タンタル(同2位)をはじめ、銅、ダイヤモンド、リチウム及びスズなどの資源に恵まれていますが、鉱物をめぐって複数の武装グループによる紛争が長期化。紛争地域に住む人々は穏やかに暮らすことができない状況です。
第4回の授業では、コンゴ民主共和国の情勢に詳しいTBSの立山芽以子(※2)さんによる講演をビデオ会議システム「Zoom」で行いました。
※2 立山芽以子さん…1973年12月6日生まれ。長野県出身。1997年TBS入社。政治部、社会部、TBS系報道番組『NEWS23』ディレクターなどを経て、現在同番組のプロデューサー。主な担当企画に「棄民 ドミニカ移民たちは訴える」「アフリカ・農村開発の光と影」「世界変えたい系男子の挑戦」など。2018年にコンゴ民主共和国を訪問している。
立山さんは2016年からコンゴ民主共和国の婦人科医、デニ・ムクウェゲ医師を取材。TBSの「JNNドキュメンタリー ザ・フォーカス」で放送した「ムクウェゲ医師の終わらない闘い(※3)」は「ギャラクシー賞」を受賞。
2020年春公開されたドキュメンタリー映画『ムクウェゲ「女性にとって世界最悪の場所」で闘う医師』では監督を務めています。
※3 デニ・ムクウェゲ医師…1955年、コンゴ民主共和国東部ブカブ生まれの婦人科医。1999年、ブカブにパンジ病院を設立、以来5万人以上の性暴力被害者を治療、救済してきた。2018年、イラクのナディア・ムラドさんとともにノーベル平和賞を受賞。
膨大な天然資源があるにもかかわらず、世界で最も貧しい国と言われているコンゴ民主共和国。
立山さんも「資源は豊かなのに、人々の生活は貧しい」と語ります。ドキュメンタリーを見ながら、コンゴ民主共和国を訪れたときのこと、取材をする中で感じた想いなどをお話していただきました。
講演の最後に設けられた質問コーナーでは、事前に募集した質問を江坂キャンパスの生徒が代表してお聞きしました。
そのうちのひとつ「紛争や戦争をどう解決すれば良いとお考えですか?」という質問には、「コンゴ民主共和国のニュースを見かけることはそう多くありません。しかしその実態は自分の予想を遥かに超えるものでした。この実態を共有することが解決への一歩だと思います」と返答。
また、普段の取材のモチベーションについて「テレビは相手の顔が見えないため砂漠に水をまいているような感覚があります。ごく稀にアクションを起こしている人がいるから頑張れる」とおっしゃっていました。
立山さんのお話を聞いて、「自分たちに何ができるのか」を考えた生徒たち。質問をした生徒は、「Google Classroom」(※5)の日誌に、以下のような振り返りをしていました。
※5 Google Classroomとは…Googleが学校向けに開発したWebサービス。課題の作成、配布、採点をサービス上で行うことができ、教師と生徒間でペーパーレスに共有できる。
「コンゴ民主共和国の実態については報道されているところをあまり見たことがなかった。今回の立山さんの講演やドキュメンタリーの現状は自分の予想を超えたものだった。今回のシティズンシップの授業では身近なものも含めて様々なことを改めて考えさせられた。僕が実際に貢献できることは少ないかもしれないけれども、できることから少しずつはじめられたらと思った」
その後の授業では、スマートフォンと紛争問題について、個人で考えを深めていきました。
SNSで発信することを前提に、伝えたいことを140文字にまとめる練習や「支援する」「仕組みを変える」「コミュニティを作る」「自分を変える」といった多角的な問題の関わり方を学んでいきました。
最終的には、自分が共感する問題に対して、どのように関わっていくか「マニフェスト」(宣言書)を作り発表しました。
マニフェストには、「具体的な目標」「実現方法」「実現したい時期」「誰が喜ぶのか」も記入。
身近な洪水・土砂災害のほか、世界の食糧・水不足に触れる生徒もいました。
発表を終えた生徒たちから「自分の共感する問題については複数思いついたが、そこから自分なりの関わり方を考えることが大変だった」「マニフェストはよかったもののもっと詰められるところはあったと思う。他の人のマニフェストで自分が出せなかったアイデアを出すことができていたのがすごいと思いました」などの感想が上がっていました。
自分たちが所属するコミュニティで共感できること、できそうなこと、やってみたいこと。自分らしい社会の関わり方を考えるきっかけになりました。